2025/10/31その他
世界に挑戦!和菓子でつなぐ日本の味~日本橋どらやき~
榮太樓總本鋪が初めて海外に進出したのは、今からちょうど50年前の1975(昭和50)年。日本の和菓子屋として初めてニューヨークに店舗を構えました。当時は現地紙はじめ業界紙でも多く取り上げられた出来事です。遠く日本を離れて暮らす人々に、伝統の和菓子のできたての味を楽しんでほしい。そんな想いと同時に、「日本の味・和菓子を世界でどう評価してもらえるか」という挑戦の意味もありました。
半世紀を経た今、榮太樓は再び世界に挑みます。日本食が世界中に広がる一方で、和菓子の認知度はまだ高くありません。そこで、和菓子の魅力をもっと海外に伝えたいという強い想いがあり、昨年2024(令和6)年秋から本格的に活動を開始しました。

最初の舞台はアメリカ・マサチューセッツ州「Maruichi Japanese Market」。日本橋・山本山さんの抹茶イベントに合わせ「和菓子も一緒に」と当社に声をかけていただいたことがきっかけでした。
話し合いを重ねる中で、現地でも比較的親しみやすい「どらやき」を売ろうという話になりました。「せっかくなら、ただ並べて売るだけでは面白くない、現地で実演パフォーマンスをしよう」と、副社長の細田真也自らが決意。限られた期間の中、ひと夏で製造技術を習得し、昨年秋に初の実演パフォーマンスを披露。日本橋どらやきは期間中完売し、抹茶イベントとともに好評を博しました。
今年秋には和菓子単独での出店に挑戦。昨年に続くマサチューセッツ州「Maruichi」に加え、新たにバージニア州「Marufuji Japanese Matket」でもどらやきの実演パフォーマンスを行いながら日本橋どらやき(つぶしあん・栗あん)の販売を行いました。
▶(左)バージニア州「Marufuji」(10/3-10/5販売)、(右)マサチューセッツ州「Maruichi」(10/8-10/12販売)
▶現地では日本橋どらやき(つぶしあん)と季節限定「栗あん」二種類を展開。
二種類(つぶしあん・栗あん)販売しましたが、どちらも人気の中、「つぶしあん」の方がやや売れ行きが良かったそうです。
試食を提供すると、「パンケーキみたい」と興味を持つお客様が多く、「中身は何?」とよく質問がありました。あんこと伝えるときは“レッド・ビーンズ・ペースト”と説明。今ではたい焼きなどであんこの存在も知られるようになり、若い世代を中心に抵抗なく受け入れられました。日本アニメ文化の広まりもあり、「日本に行ってみたい」「食べてみたい」と日本に対する興味・関心度の高さが伺えます。
▶現地のお客様からもどらやきの反響はとても良かったです。
▶どらやきを目の前で焼くシーンでは多くのお客様が売場前に集まりました。
▶(左)現地制作の当社紹介POP、(右)どらやきの陳列台
現地では、販売先の店舗が榮太樓を「WAGASHI LEGEND from JAPAN!!」と紹介するPOPを制作し、インスタグラムなどSNSでも積極的に発信してくれました。その投稿を見て「SNSで見たから来たよ」と訪れるお客様も多く、オンラインからオフラインへと広がる反響を実感できたイベントとなりました。連日の試食は完食、販売したどらやきもすべて完売できました。リピーターのお客様や、昨年買って予約してくださる方もおり、「見て、食べて、買ってもらう」実演パフォーマンスの効果とSNSの力が合わさり、和菓子の新しい広がりを感じる結果となりました。一方で、現地での苦労もありました。日本とアメリカでは水質が異なり、生地のやわらかさや焼き上がりの状態が変わること。経験を重ねながら、その日の状態を見て調整していったといいます。
最後に会場では、60年前に制作した和菓子の手わざや美しさを紹介する短編映画「和菓子」(英語版)をモニターで上映。現地の子どもたちが興味深そうに見入っていた姿が印象的でした。実演と映像、両方で和菓子文化を感じてもらう貴重な機会になりました。今回の実演パフォーマンスを通じて、「榮太樓のどらやき」を初めて知った方々が「おいしい」と笑顔で購入してくださる姿がありました。ブランドの知名度がないところから、味そのものが評価されたことは大きな励みです。私たちが江戸末期、屋台の店から始めた原点に通じることでもあります。
これからも榮太樓總本鋪は、和菓子の美味しさと文化を世界に伝える活動を続けてまいります。
